世の中のおせちは3種類しかない って知ってた?
世の中のおせちは3種類しかない。
3種類とは製造~お届けまで、どのような状態で作られて、届くのかを指します。
今回は、一般に流通しているおせちは3種類というのは、製造後3種類の方法で流通させる事です。
①冷凍おせち
②冷チルおせち
③生おせち
それぞれの特徴やメリット、デメリットをここで解説します。
冷凍おせち
冷凍おせちは、その名の通り、おせちを冷凍してお届けします。ギフト系は通販系は冷凍おせちの取り扱い比率が高いです。
冷凍おせちはどういうものなのでしょうか?
冷凍おせちのメリット
①冷凍おせち の場合、”解凍してから食べるまでの時間が短い”
つまり、おせち食材ががっつり日持ちしなくて良いのです。
それにより、おせちを企画する側はどう考えるのか?
おせちに盛り込める幅が広がる。10℃で約96時間~120時間程の日持ちが出来れば
安全性は担保しやすいです。
そのため、味の薄いものを入れやすい。美味しいけど、日持ちがしないもの(例:本物のローストビーフ等)を
入れる事が出来る。
②輸送時に荷崩れがほぼ発生しない。
ギフト系通販は特に冷凍おせちをメインで扱っています。理由は荷崩れによるクレーム防止。
ギフト会社ならではの優先順位です。自家需要メインの通販は冷凍、冷チル両方扱う事があります。
宅配業者もクレームが少ないので安心して運ぶ事が出来るが、冷凍で運ばないといけない為、配送キャパ問題も同時に発生する。
③冷凍技術の向上。
急速凍結機の進化が目覚ましく、凍結による品質劣化は少なくなっています。
これが冷凍だったの?と感じるようになっています。
凍結に対し、まだ解決できていないのは野菜関係です。野菜は凍結に対する耐性が非常に弱く
冷凍おせちには、入れたいけど入れられないもの が多く存在します。
例:里芋、人参、蓮根、くわい。
2フローズンになる商品は、耐性の低い食材は劣化が起こります。
”おせちは科学だ!”を掲げている当社では、出来るだけワンフローズンで作る方法を多く取り入れて品質の劣化を防ぐおせちも作るようにしています。
このような冷凍耐性が弱いものでも、冷凍技術の向上により、ごぼうなど食感が改善できるものが増えてきています。
④安心安全
解凍してから食べるまでの時間が短いのは、食材の汚染も最小限になる為、
元旦に食べる必要もない。お正月に海外⇒戻ってから解凍して食べる。
1月4日、5日にお客さんが来る⇒4、5日でも出す事が出来る。
など幅広く対応する事ができます。
ギフト会社が冷凍中心なのも安全性やクレームが少ないというも納得ですね。
冷凍おせちのデメリット
①解凍に失敗すると台無し。
おせちは解凍温度や条件によって、味や食感が変わってしまうデリケートな商品なんです。
解凍方法はじっくり、冷蔵庫でゆっくり解凍させてください。解凍方法は概ね説明書が入っています。
冷蔵庫に入らない場合は、涼しい所で解凍してください。と記載がありますが、温度変化が少ない冷蔵庫で解凍する事がベストです。
上手に解凍させて、美味しく食べましょう!でも冷蔵庫にそんな大きなおせち入りませんよ・・・という声も少なくありません。
冷蔵庫以外の涼しい所で解凍するにしても、温度変化が大きいので、調整が難しいのが現状。
【解凍に失敗するってなに??】
何故、味が変わるのか? 高い常温の温度帯や暖かい部屋、こたつの上などで解凍してしまった場合、どのような事が起こるのか?
一番変化が大きいのが水分量の多い食材です。水分量が少ない食材ほど、変化は少なくなります。
【水分量の多い食材】
例:なま酢 ・・・・酢がに含まれる旨味が落ちてしまう。カップの底に水分がたっぷり落ちてしまいます。食感も歯ごたえが無くなる。
数の子 ・・・・味付けした出汁が落ちてしまう。薄味になり、食感だけを楽しむものになってしまう。
煮物全般 ・・・・数の子同様に、出汁が抜けてしまい、食感が悪くなる。
例外:花餅 ・・・・・餅を使った食材は、冷蔵でじっくり解凍すると、”白蝋化”する場合があります。白蝋化すると、餅が固くなって
しまう現象。現在では白蝋化を防止する為、βアミラーゼという酵素を入れて固くならない工夫をしていますが、
まれに固くなる事があります。
②煮物が入れられない
最近は冷凍技術が進化しています。電磁波を出して凍結させる等、いろいろな急速凍結方法があります。
それにより、冷凍しても味や食感が良い状態で提供できるようになりました。
それでもクリアできないものとして、”冷凍に耐えられる野菜” は少なく、煮物と言えば、根菜など農産物が中心です。
冷凍技術が向上しているとは言え、まだまだ食感の悪い状態になってしまいます。
しかし、”おせちは化学だ!” を目指している当社では、根菜を冷凍してもかなり良い状態になる製品を開発していますので
別途ブログを記載していきますね。
③冷凍技術(冷凍機)の差が出る。
急速凍結機のレベルが高いものを入れている工場の商品は、解凍後の品質の劣化は比較的小さくなっています。
しかし、高額な急速冷凍機を導入するのは資金的にも大変です。安い急速凍結機ではなかなか難しいのが現実。
導入が難しい所は、急速でない冷凍庫で普通に凍結する工場もあるので、解凍後の状態がなかり悪くなってしまいます。
私は、おせちのカタログを見れば、だいたいどのおせちが、どこの工場で作られていて、品質の状態、味のレベル、原価が概ねわかりますが
単純に安かろう悪かろうはだいたい正解ですが、例外も多く存在します。
つまり製造直販していたり、ある程度の原価予算を超えると、おせちで失敗する事が少なくなるラインも存在します。
そういった事もブログで発信していこうと思います。
④2フローズンになる
おせちの各パーツの7割~8割は冷凍で製造されてあらかじめ準備されます。海老や伊達巻、かまぼこ、数の子、いくらなど
兎に角なんでも冷凍で作っています。昆布巻き、竹の子、黒豆、栗 などは比較的冷蔵で作られています。
単純におせちの製造工程を記載すると
製造工程】 冷凍された各パーツ ⇒ 各パーツを解凍 ⇒ 盛り付け ⇒ 凍結
となります。凍結されていたものを解凍して、また凍結すると2回凍結する事になります。
2回凍結すると、さらに商品の劣化が発生します。水分量の少ない商品は、比較的耐性がありますので、問題は耐性の低い商品を
どのように工夫して劣化させないか? が美味しく食べられるかどうか? がポイントになってきます。
”おせちは化学だ!”の当社は、この2フローズンの解消も出来るだけ取り組んでおり、1フローズンで品質劣化を防止する
研究も進めており、当社の美味しいおせちをぜひお召し上がりください。
冷チルおせち
冷チルおせちとは、冷凍をチルドにして出荷する。
冷蔵おせち と表記されているおせちは、この 冷チルおせち と 生おせち が該当します。どちらに該当するかどうかは
カタログでは、わかりません。あくまでも”冷蔵”でお届けする という意味にあたります。
世の中の”冷蔵おせち”の殆どがこれ。ほとんどがこれって、結局は冷凍おせちじゃん!って思うと思います。
しかし、”冷凍おせち”を作る時と、”冷蔵おせち”を作る時では、パーツ選びの基準も違えば、解凍方法にも工夫があります。
冷蔵にしてお届けする意味もちゃんとあります。そのあたりを見ていきましょう。
冷チルおせちのメリット
①冷蔵で到着するので、解凍に失敗しない。
営業倉庫でゆっくりと解凍するので、冷凍おせちを自宅で解凍して失敗するというのが防げます。
家庭だと、冷蔵庫で寒い所があまりなく、温度変化も大きいです。それが無いというのは大きいですよね。
”冷凍おせちを一番よい状態で食べられる”というのが、冷チルおせちの一番のメリットです。
②冷チルおせちのパーツ選び
冷凍よりも、若干ではあるが安心安全性のリスクは下がりますが、十分安心できるものになります。
冷凍おせちに比べ、冷チルおせちは解凍されてから、食べるまでの時間が2~3日違います。
その為、冷チルでは10℃ 144時間~168時間ほどの日持ち検査をクリアするものを盛り込みます。
徹底している工場では基準を192時間という所もありますが、それは長すぎて逆に入れるものがほとんど無いとか
味が濃いものしか入れられないなど、デメリットもあります。
③物流が確保しやすい。
これは、食べる側のメリットではありませんが、手配する側のメリットです。
冷凍おせちだと、保冷機能のあるトラックが必要になりますが、冷チルおせちの場合、冬なので外気は冷蔵状態。
冷蔵状態なので、保冷剤で箱の中の温度を安定させておけば、保冷機能の無いトラックでも輸送可能です。
保冷機能のあるトラックが不足して、物流がパンクして運びきれない というようなトラブルを避ける事が出来ますね。
④冷凍おせち同様に、計画的に製造が出来る。
計画的に製造が出来ると、その準備にも余裕を持って臨む事が出来ますし、問題点があれば事前に修正を行う事ができます。
製造数も多く作る事が出来ます。製造数が多く作れるようになると、スケールメリットにより原価を下げる交渉も可能になります。
冷チルおせちのデメリット
①冷凍おせちを同じく、煮物が入れずらい、2フローズンになるのは同じ。
基本的に冷凍おせちを作る作業としては同じなので、煮物などは入れずらいですよね。
”おせちは科学だ!”として日々研究している当社では、業界初、冷凍できる煮物を開発しましたので
またブログにも上げていきます。お楽しみに!
②日持ちするものが前提。
冷凍おせちよりも2~3日日持ちが必要になります。そうなると、普通に作っていては日持ちできない
というものが多く出てきます。製造方法の工夫や、当然ながら日持ちさせるための添加物なども入れていかなくてはなりません。
冷凍おせちと比較しても、添加物の量は多くなる傾向にあります。
これも一長一短で、”腐敗”という人命に直結するようなリスクから見ると”安心安全” ですが
添加物という長期的なリスクを見ると”安心安全”とは言えないのかもしれません。
単純に”安心安全”と言っても、どの立場で、どの目線で見るかで大きく変わりますね。
味については、味はいいけど、日持ちしない という商品が採用できないので、盛り込める幅が狭くなってしまうのは残念です。
合成保存料、合成着色料の排除 というおせちもありますが、日本と海外では安全の考え方が違うという事も
知っていく必要がありますので、この事についてもブログで展開していきますね。
③冷蔵状態なので、物流の荷崩れが心配
冷蔵状態なので、荷扱いが悪いとおせちの荷崩れが発生します。(中身がぐちゃぐちゃになってしまう事)
各社工夫は進めており、
例:1段1段シュリンク包装(ラップで包むイメージ)をしている。
例:シュリンク包装していない所は、厚めのスポンジを段の間に挟んで上下の動きを抑えている。
例:解凍はスタートさせているが、流通段階ではわざと完全には解凍させない状態にしておき、
保冷機能のあるトラックで輸送するなど荷崩れを防止するような対策を取っている会社もあります。
それでも冷凍に比べると荷崩れしやすい為、宅配便などはできるだけ使わず
店舗販売の所は店舗引き取り で出来るだけ促進したいと思っています。
実際は各社の工夫で荷崩れと言っても、黒豆が違う所に転がっている という程度で済んでいる事がほとんどですね。
ですので、ネットでも取り扱い業者が増えてきていますね。
生協さんなど、自社配送ルートを持っている企業は冷チルをメインに取り扱っていますね。
生おせち
生おせちとは、文字通り作ったそのままをご提供するというものです。
しかし、冷チルよりもはるかに荷崩れの恐れがあるので、できるだけ引き取りで販売している事が多いです。
宅配もできなくはないですが、荷崩れしてしまう前提でお願いしていきましょう。
通常のテイクアウト同様、消費期限が短い為 地元の仕出し屋、百貨店の超高級おせちなど
近場で購入する前提となります。遠方への配送は行っていない所が殆どですね。
生おせちのメリット
一番大きなメリットは味です。
三種類の中では、ダントツで美味しいものが出来る。
冷凍では入れる事が出来なかった、くわい、蓮根、里芋を入れる事ができますし、煮物全般を
入れる事が出来ます。
一番の違いは煮物の品質。やはり製造後に 凍結しない というのは大きい。一番良い状態で食べて貰う事が出来る。
すべて自分たちで作る事はほぼ不可能に近いです。仕入た状態では冷凍されている食材でも、そのワンフローズンのみで済むので
かなり品質の良い状態で出せるもの味が良くなる要因です。
生おせちのデメリット
①安心安全レベルを保つのが困難。
安心安全レベルでいうと、一番危険性が高いです。※危険性が高いと書いていますが、ダメというわけではありません。
通常のテイクアウトの場合は、その日に作って、数時間以内に食べきる事が出来ますので、問題が無いのですが
おせちの場合、その日に作って、その日には食べる事は出来ません。
②生おせちを作るスケジューリング
27日:製造する原料のチェック。28日製造品の仕込み。
28日:煮物や自社商品などを作る。その他の仕入れ品を解凍し、バットやバンジュウに移す。
29日:盛り込み。風呂敷などの梱包作業。
30日:各店舗やデパートに配送、31日引き渡しとなります。
③生おせちのパーツ選び
上記スケジューリングを見ると、28日~翌年1月1日までの5日間+安全係数1日の6日間(144時間)は
日持ちがするものであればOKという事になります。
しかし、この規格などもキチンとした衛生レベルの高い工場であればこれでOKという基準です。
町の仕出し屋さん、料亭などではなかなかそういった工業製品を作るという前提の建物ではないので
けっこうギリギリのラインだと思います。
また、町の仕出し屋さんや、料亭などで、上記の基準を設けて作っている所は少ないので、いつ何が起こってもおかしくない。
批判しているように見えますが、現実はまだまだ管理の甘いお店が多いので、心配の種です・・・・
きちんと管理して作れば安全は担保できますし、味は美味しく仕上げる事が出来るので、
どれを取るか。という企業の選定によります。
④生おせちを製造する所がどんどん減っている。
上記のように、生おせちは危険性が高いため、町のお店は製造をやめる所が増えています。
大手の徹底管理された工場でも撤退する所も出てきています。
理由は27日~ド短期で人数を集める為、普段従事していないアルバイトで作る事が多い。
(どんな人が来るか分からないし、近年はコロナの集団感染リスクも抱えて行わないといけない)
生とは言え、もともと冷凍のパーツが殆どなので、生の意味を考えなおす所もある。
配送リスクが高い 引き取りに来てもらえる顧客は年々減ってくる。
1月1日に食べきらないといけない。
製造できる量が少ないので、拡大する事は出来ない。
夜なべして作っている所も未だ存在している。→従業員が付いてきてくれない。
いくら準備しているとはいえ、ぶっつけ本番で作るので、急遽色々なトラブルが起こる事がある。
例えば、作業ミスで、バンジュウをひっくり返してしまう等はあるある。
このように、かなりお届けするまでに製造側のデメリットが多く、生おせちにおけるビジネスモデルは限界を迎えている状態であると感じます。
まとめ
このように、3種類あるおせちの形態はそれぞれの良さがあり
どれを選択するか?はこのような事実を見て選んでみてはいかがでしょうか?
私の主観ですが、下記のように項目別にまとめてみました。
どの工場が作っているか?どの企業が企画しているか?によって、
下記の★項目についての★の数は変わってきますが、あくまでも業界を平均化したイメージで考えた評価としています。
弊社のおせちは、安心安全を重視している為、冷凍、冷チル を専門にしております。是非ご賞味ください。